さよならチャカルチ
日曜日, 9月 28th, 2008
チャカルチにはじめて会ったのはまだ夏になりたてのころ。
小さい体でチョコチョコ私について回った。
一度裏玄関先の階段から落ちて麻痺しかけたことがあり、
そのときは義母が驚いた。私はチャカルチがマヒしかけて
目を白黒させてるのを想像して、気分が悪くなった。
チャカルチはAランクの犬で、その辺のマルチーズとは一味
違うらしいが、マルチーズ界の美男美女の話は私にはよく
わからない。でも私が夢中になるのだから、何かひきつける
ものがあるのには間違いない。その美貌のせいで、チャカルチは
近い将来元々このマルチーズをくれた農場のおじさんに引き取られる
ことは、チャカルチが赤ちゃんの時から聞かされていた。
「かわいく生まれたから一緒にいられないんだよ」と
私がチャカルチに愚痴っぽく言っていると、義母が声をたてて笑った。
笑い事じゃない。
チャカルチはすくすく大きくなって、今は両腕に余るぐらいの
大きさになって、これからもまだ成長の兆しを見せている。
チャカルチはあまり鳴かない。
プードルのぴーちゃんとヨークシャテリアのアルフがキャンキャン
騒ぎ立ててるのをよそ眼に、じっと座って様子をうかがっている。
長く延びた白い毛の中に埋もれた目で、目を凝らしてじっとしている。
チャカルチはヒステリーなので、背中にほかの犬がのっかったり、
自慢の毛をひっぱったりするとううっと唸って威嚇する。
それは毛をブラッシングしてあげても同じことで、おしりのあたりを
丁寧になでるようにブラッシングしてもまだお気に召さないようで、
ううっと唸って威嚇する。威嚇したと思ったら、今度はキーキーと
この世の終わりのような悲しい声ですすり泣く。こっちはご機嫌を損ねないように
必死に
ブラシをいまだかつて持ったことがないような形でそっともって、
総理大臣の毛でも植毛するかのようにやさしく触る。
そんな風に丁寧に接待していたら、チャカルチはいつの間にか殿様風になった。
吠えたりはしないし、いじわるをすることもないが、他の犬はチャカルチに
一目置いているようで、小さなボックスの中に入れた犬用ベッドにアルフが
寝そべっているとのそのそとゆったりチャカルチがやってきて、アルフが
あたかも存在しないかのようにゆったりと重なって犬用ベッドに座った。
ボックスの中で影になった犬用ベッドの奥の端の方で寝そべってるはずの
アルフが見えない形になった。しばらく経つと不便に耐えかねたアルフは
その小さな家をチャカルチに譲る形で出た。
チャカルチは目の周囲がメヤニで少し茶色っぽい。
犬の本を見て、飼い主が注意して取ってあげないとだめだと読んだのは
もうチャカルチの毛がめやにのメッシュで染色しつくされたあとだ。
というわけでチャカルチはこれから先飼い主のぐうだらの勲章を背負って
生きていかなければならない。
チャカルチはかわいいくせに目の部分にヤニをつけて、今日ものそのそと
歩きまわっている。ちょっと前までシャンプーをするとかわいそうに
なるぐらい細くて小さくなったのに、今はウエストまわりがぼてぼてしている。
チャカルチのちょっと出した舌が、チャカルチの大きなおしりが、
チャカルチの結んだまま固まっちゃった前髪が、チャカルチのヒステリーな
キーキー声が、チャカルチののそのそと歩く姿が、チャカルチの肉球が、
全部明日になるとなくなってしまうことを想像すると、涙が止まらなくなる。
明日チャカルチは「かわいい」から、犬農場に仕事をしに帰っていく。
彼はブリーダー犬だから、かわいい犬を産むために、毛を全部削がれて
寒い冬も外で生活しなければならない。今の時期から寒さに慣らさないといけない
から、明日連れてく、と聞いたのは昨日だ。
チャカルチがいつか連れてかれてしまうのは聞いていたけど、すっかり
忘れていた私は、深いかなしみに取りつかれて、どん底に突き落とされた
気分になった。
少し糞尿の匂いのついた自慢のふわふわの毛に身を包んだチャカルチ
を想像して空気のチャカルチを抱いてみるがうまくいかない。
チャカルチの鼻から口にかけてくっきりIの線がひかれているのを
発見して、「あ、これマンガの犬にある線だ!ほんとにあるんだ」と
小さく感動した時のことを思い出してみる。チャカルチのリップはピンク
じゃなくて真っ黒だった。
チャカルチは仕事のために家をでる。
私は犬農場のおじさんに「2年後引き取りに行きます」と冗談っぽく
見えないように言う練習をする必要がある。韓国語で私がいうと
どうも冗談っぽく聞こえそうで。
チャカルチがもう子供をつくらなくてよくなったら、私が余生を一緒に
過ごす、と私は勝手に心に誓って、その気持ちを冗談じゃなくて
ほんとなんだよ、ということを忘れないうちに残しておくために
おっくうにもこんな文章を書いて未来の自分にアピールしてる。
チャカルチがちゃんと仕事してる間私もちゃんと仕事して
絶対迎えに行こう。



























